子どもの自立を促す、愛着形成の大切さ 愛着障害が及ぼす影響

ペンギンの親子

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最初に、本のご紹介です。

子どもの脳を傷つける親たち 

 

福井大学子どものこころの発達研究センター教授、友田明美先生の著書。Amazon小児科学カテゴリーでベストセラー1位ですので、既にお読みになった方もおられるかもしれません。

センセーショナルなタイトルですが、子どもの脳は大人の不適切なかかわり(マルトリートメント)によって障害を受ける、また、早期の改善で回復が見込まれる事を科学的根拠に基づき、著者の経験談も交えながら描かれている良著です。

マルトリートメント≒虐待

ですが、子どものこころと身体の健全な成長・発達を阻む養育全てを含んだ呼称です。マルトリートメントは全ての家庭で起こりうることで、その問題と解決の本質を見失う事を避けるため、本書では虐待という言葉ではなく、マルトリートメントという用語で統一され話が展開されています。

驚くことに脳の障害の程度は、

(自分に向けられた、または大人同士の)言葉の暴力>両親間の身体的暴力

でより大きい事がわかりました(p93)。つまり、大人同士の激しい言い争いも子どもの脳を傷つけ得るということです。

 

愛着形成の大切さ

 

本題の愛着形成と子どもの自立とのかかわりに関しても本書で触れらています(p158~)。一般的に生後半年~5歳くらいまでが愛着形成に特に大切な期間とされています。この時期に主たる養育者(親、保育園の先生など)と健全な愛情のやりとりができると、「自分は守られ愛されている」という精神的な基地ができます。さらに、前向きに他者と協力でき新たな環境へ挑戦する力が育まれる、つまり自立できる、というプロセスを踏みます。自己肯定感やストレス耐性も育まれます。

一方、愛着障害とは文字通り愛着が不足した結果として出現する様々な症状の総括で、幼児期に受けたマルトリートメントに起因する愛着障害は感情抑制機能に問題が発生しやすいとの事です。ストレス耐性、対人関係の問題、発達障害に似た症状の出現などが挙げられています。愛着障害は早期の医療的介入で改善は見込まれるものの、かなりの時間と労力を必要とする点にも触れられています。

つまり、初めから愛着形成を意識して子育てを行えると、親子共に精神的に安定し、将来的に得られるものも大きい、という事です。

また、親性は最初から備わっているものではなく、子どもとの触れ合いを通し育まれるもの、また赤ちゃんとのスキンシップをはかるほどその促進因子であるオキシトシンが分泌される事にも触れています(p203)。育児に自信がないパパも赤ちゃんを抱っこするほど子どもを慈しむ心が育まれるということ。まさに、子どもが親を親として育ててくれるのですね!

子育てに奮闘する人を支え、子どもの成長を多くの関係者で見守ることが、日本の経済的、社会的な損失を抑え、誰にとっても暮らしやすい環境をつくっていくことにつながると、わたしは考えます。

と、マルトリートメントを受ける子どもだけでなく、子を持つ親の全般的な社会的支援の必要性も本書で発信されています。本文中に挙げられた、親へのケアの取り組みに関してurlを添付しておきますのでご参考にされてください。

 

親へのケアの取り組み

 

1.親や養育者を対象とした子どもとの愛着を適切に形成していくためのプログラム

CARE(Child-Adult relationship Enhancement)

アメリカでは全ての大人がこのプログラムにアクセス可能との事。すばらしい。

CARE-Japan:日本での代表団体

CARE - CAREプログラム-子どもと大人の絆を深める

CAREの実践を取り上げた西日本新聞の記事

https://www.google.co.jp/amp/s/www.nishinippon.co.jp/item/n/369493.amp

 

2.家庭からマルトリートメントを減らそうとする取り組み

科学技術振興機構/社会技術研究開発センター 

養育者支援によって子ども虐待を低減するシステムの構築

 

最後に

 

本文でご紹介したCAREは、子どもの行動を支持的に見守り、適切なタイミングで声掛けをするのが基本のようで、モンテッソーリの幼児教育にも通じるものがあるな、と思いました。私は本書を折に触れて読み返しています(といっても年1程度ですが)。自分が子どもの安全基地になれているか、自問自答の毎日です。今後も子育てバイブルの1つとして手元に大切に置いておきたい一冊です。

本記事では愛着形成の点を強調したかったため、マルトリートメントが脳に与える具体的な障害に関する記載内容の紹介は割愛しています。愛着形成の大切さと愛着障害の構造に関し書かれた一般向けの書籍の中ではピカイチだと思います。是非手に取ってお読みください。

 

 

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